平成の大改修

9月に入り、仕事の繁忙期が過ぎたので隔週で土曜日が休みになった。今日はその休みである。

せっかく休みなのでどこかに行こうかな、とも考えたのだが、


「土曜日の朝8時にセニョールに向かわせる」

と言われていたのを思い出した。そう、そのセニョールとは電気関係や水道関連を直してくれるセニョールである。

この間、また電球が切れて、変えても変えてもすぐ切れるこの電球はいったい何なのだ、そして、何か月も前にお願いした水漏れの修理に大家が全く対応してくれていないことを上司にぼやいたのが始まりだった。

「じゃあ、信頼して世話になっている建築家に連絡して、セニョールを向かわせる」

ということになり、速攻連絡を取ってもらい、あれよあれよと土曜日の8時に来ることになってしまった。こういう対応のスピーディさには本当いつもたまげる。何も起こらない時は本当に何も起こらないのに、ことが進みだすと嘘のようにとんとんと進むのがメヒコである。

土曜日の8時にセニョールが来て、どこを直せばいいのか、そしていくらかかるかを見積もってもらうという話だった。2か月間大家が留守にしているので、かかった費用を家賃から引いてお手伝いさんに支払おうという考えである。いちいちお伺いを立てていては一生直らんだろうと思ったので、もういない今がチャンスと思ったのだ。

セニョールが来て、

「ここが悪いんだ、そういえばここも、ああ、ついでにこれも気になっててさ」

と気になっているところを次々に説明し、いつ直そうかという話になった時に、「今からでもいい」というのでそうしてもらうことにした。シャワーを直すためには水栓を閉めないといけなかったのだが、その栓が見つからず、大家さんが住んでいる2階部分にも上がったけど見つからず、そういうのを見るにつけ、この住宅のつぎはぎ感が浮き彫りになってきてちょっとホープレスな感じがした。こんなところに住んでるのかよ、あたし……。

気を取り直して家の近所に材料を買いに行き、家に戻ってきて直し、次ははしごを取りに行った。私の家は天井がものすごく高いので、部屋の実際の広さ以上に広く感じるのでそこが気に入っているのだが、電球が切れるたびに長いはしごがないと変えられないのが難点である。しかも謎の病のように、すぐに電球が切れるのである。

一度大家に訴えたけど、「そんなもんだよ」とさらりと流されてしまった。箱に7000時間長持ち、とか書いてある電球がすぐに切れたから、そんなわけないやろう、と思ったけど彼に直す、あるいは原因を調べる意思がないのは明らかだった。

はしごを調達してきたセニョールは電球をソケットごと外しソケットを見せてくれた。どうやら老朽化が進んでいたらしく、ケーブルが何本かちぎれていたので電流がうまく送れていなかったので、電球に負担がかかっていたのだそうだ。

再び材料を買いにセニョールと出かけて、帰ってきてソケットをチェックして作業が順調に進みだすのかと思いきや、「ねじの長さが足りねえ」ということになり、「買いに行ってくる」と出かけて行った。この途中で材料を買いに何度も出かける感じ、デジャブかと思ったけどきっとこれがデフォルトなのだ。もはや動じない私。

かれこれ、1時間は立つと思うのだがまだ帰ってこない……。セニョールよ、いったいどこまで行ったのだ。たぶん、昼ごはんでも食べに行ったような気がするな。

うむ、そうに違いない。

私もおなかがすいたのでシリアルやブドウを食べて時間をつぶし、腹を満たした。しかしまだ帰ってくる気配がなく、この備忘録を書くにいたっている。

か、書き終わってしまう……よ。

8時半に始まったこの冒険は、今もう夕方の4時半を迎えようとしている。たぶん、今日中には終わると思うけど……。というわけで、連休の遠出計画は水の泡と消えた。でも、生活の困っていることが解決するなら、ほんま今日費やした時間は無駄にはなるまい。

お、人の声がする。もしやセニョールが帰って来たのか……?!?!


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