メヒコの風景

6月の半ばから1か月と少し日本に一時帰国してきた。まさかこの暑い中帰国するとはな、と思ったけど気候のことはさておき、日本は快適だ。

今回の日本帰国では、京都や大阪に加えて久しぶりに東京も訪れた。ほとんどの目的がひとに会うというものだったが、会う人はみんな、場所ややっていることは異なれどがんばっていて話をしているとエネルギーをたくさんもらった。ありがたいことに、友だちだけではなく友だちのお母さんやお父さんにお会いする機会にも恵まれた。友だちのお母さんの一人がなぜか私のこのブログを楽しみにしてくれているのだそうだ。というわけで、今回久しぶりに投稿画面を立ち上げてみたわけなのだが、幸い書きたいことも見つかったのだ。(おばちゃ~ん、見てくれてますか~~??)

1年ぶり以上に帰る日本は、新しいものがあっても意外とすんなりなじめるものだ。日本語だって相変わらずばっちりだし、困ったことといえばメガネをなくして裸眼で慣れない街の公共交通機関を使う羽目になり、表示がまったく見えなかったときくらいのもので、その他は「いやぁ、すごいなぁ」と感心してばかりだった気がする。

オアハカで知り合った友だちと日本で会って新鮮だったけど、その反面誰とでも昔からの知り合いだったような錯覚を感じることもしばしばだった。いろいろな店に入ってみれば、「使いやすそう、そしてかわいい」という洗練された無駄がないけどかわいい要素をしっかりと持っている製品が多くて感動的だった。

あと、やはり日本語の活字に飢えていたと気づかされた。読書をここのところしていなかったので、蔦谷やStanard Bookstoreなどに行ったときに本を読んだり買ったりするのが至福だった。日本語は話せるけど、活字になった日本語を十分に読んでいなかったことと、街歩きをしていたらやたらといろんなところから聞こえてくる「かわいい~」という語彙の貧弱さ(そして、自分自身も気が付けば「かわいいな、これ」とめっちゃ言ってしまっているのだ)に気が付いて「これじゃだめだ」と感じたのかもしれない。選んだ本は、谷川俊太郎さん、町田康さん、草間彌生さんの本。谷川さんは詩人だけど、文章はどんなものを書くのだろう?きっときれいな日本語を操るんだろうなぁ、と自然とエッセイに手が伸びた。町田康は完全に趣味だ。彼の小説はいくつか読んだことがあるけど、なんというか、今まで見たことなかったような疾走感とリズムと音頭を感じる小説で読んでいると小気味がよくて読みながら顔がにやけてくるというビバ・活字!!文字を追いかけるのが楽しいから好きなのだ。草間さんは、京都でフォーエバー現代美術館のプレオープンで彼女の作品を見て、それがあまりに素晴らしくて、この情熱的な作品を生み出す方の本を読んでみたいなぁ~と思っていたら、あの水玉の服を着た草間さんが表紙になった本が目に飛び込んできたのだ。全部読む時間はなかったので、オアハカでぼちぼち読んでいこうと思う。

そんなこんなであっという間に滞在期間が過ぎて、メヒコに上陸した。たった1か月、されど1か月。久しぶりの「メヒコ」という国に妙にどきどきしながら入国して、ゲートを抜けた。

その瞬間に、

「ああ、メヒコに戻って来たなぁ」

と思わざるを得ない光景が次々と目に飛び込んできた。


  • 建物の陰で座り込んで楽しそうにぺちゃくちゃ雑談に講じている作業員
  • バラの花束を抱えて到着ゲートの周りをうろうろしている青年
  • バス乗車30秒で運転手とけんかしているおばちゃん。お互い最後は罵り合ってたな。じょ、情熱的。
  • バスの運転手に意地悪をされ、顔で「お前~~~!!」とにらみつけるおばちゃん。(立て続けに乗客ともめていたから、運転手の機嫌が悪かったのかな?と疑う。)
  • 信号待ちをしながらピザをほおばるおっちゃんの2人組
  • 長距離バスが出発後5秒でバスの注意事項の案内が流れ、それが終わるや否や映画爆音上映会が始まる。(イヤホンではなく、社内に音が響き渡るタイプ。)そして、上映中は声を出して笑う声があちこちから聞かれた)
  • 予告なく前列のシートがマックスで倒されてくる
メヒコに長く居たらだんだんそれが普通になってくるからいちいち突っ込んでいられないが、こうして日本というメヒコとは正反対の文化を持つ国からやってくるとさすがに目につく。

メヒコではそれがあたかも普通に存在しているけど、ちょっと立ち止まって日本の光景を思い浮かべたけど、上にあげたどれも見なかったなと再確認すると笑いがこみ上げてきた。いやぁ、騒がしい国だ。日本にどっぷりいたせいで、到着したての私はめっちゃくちゃ「ガイジン」感を感じながらどきどきしていた。私がメヒコに来たらいつも感じている「ライブ感」は、こういう日常の1コマなのだと改めて感じる。

うっかり変な時間に寝てしまったので、時差ボケとかが結構ひどいのと、久しぶりに一人で部屋という空間の中にいるので、ぼんやりとしているのだけれど、今日市場に買い物に行ったときに

「お前久しぶりやんか~!」

と野菜屋のおっちゃんに声をかけてもらってほっこりした。そうかと思えば

「お前何人?中国??日本??名前は??」

と肉屋のお兄ちゃんに質問攻めにあい、人懐っこい無邪気な人たちだなぁとこちらも自然に笑みがこぼれた。

さて、明日からは月曜日。オアハカはまだお祭り騒ぎだろうけど、ぼちぼちと友だちに連絡をとったりしてみようと思う。


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